No.28

 「ご自分の話をしてくれるっておっしゃってましたよね」とアリス。「なぜ――『い』とか『ね』とかきらいなのかって」アリスはここのところはひそひそ声で言いました。またネズミが怒っちゃうんじゃないかと思ったからです。

 「ぼくのは、ながくてかなしいお話なのです」とネズミは、アリスのほうをむいてため息をつきました。

 「たしかに、ながーい尾話(おはなし)ですねえ」とアリスはネズミの尾っぽを見おろしました。「でも、どういうところがかなしいんですか」そして、ねずみがしゃべっているあいだも、それを考えてばかりいたので、アリスの頭のなかでは、お話はこんなかんじになりました。

    「いえのなかで出く
  わした犬がねずみに
いうことにゃ「ふた
 りで裁判所にいこう、
  おまえを訴追して
     やるからさ。――
     こいって、いやと
      はいわせない、
   ぜひともこれは
       裁判だ:だって
      けさはおれほん
     となにもする
  ことないから」
ねずみ犬にこ
   たえて言う
       には「だん
         さん、陪審
   も判事もい
     ないそんな
        裁判なぞ、
         するだけ息
       のむだです
     がな」「お
        れが判事で
      おれが陪審」
   とずるい老犬。
 「おれが全
    件さばき
     つくし、
      きさまに
        死刑を
          宣告し
           てくれ
             る。」


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