No.21


:訳者のせつめい:
海水浴装置、というのは、むかしは水着になったところが見えるとイヤラシイとみんな思ってたから、タンクみたいなものに入って、それでそれごと海に入れてもらったんだって、そのタンクのこと。


 「あんなに泣かなきゃよかった!」とアリスはあちこち泳いでそこから出ようとしました。「おかげでいま、おしおきを受けているんだわ、自分の涙におぼれて!それってどう考えても、ずいぶんと変なことよね! でもきょうは、なにもかも変だから」

 ちょうどそのとき、すこしはなれたところで、なにかがばちゃばちゃしているのが聞こえました。そこでそっちのほうに泳いで、なんだか調べてみました。最初はそれがセイウチかカバにちがいないと思ったのですが、そこで自分がすごく小さくなっているのを思い出しました。そしてやがてそれが、自分と同じようにすべってこの池にはまってしまった、ただのネズミなのがわかりました。

 「さてさて、ここでこのネズミにはなしかけたら、どうにかなるかしら? ここではなんでもすっごくずれてるから、たぶんこのネズミもしゃべれたりするんじゃないかと思うんだ。まあどうせ、ためしてみる分にはいいでしょう」そう考えて、アリスは口を開きました。「おおネズミよ、この池からでるみちをごぞんじですか? ここで泳いでて、とってもつかれちゃったんです、おおネズミよ!」(アリスは、ネズミにはなしかけるにはこれが正しいやりかたなんだろうと思ったわけだね。そんなことはこれまでしたことがなかったけれど、でもおにいさんのラテン語文法書で見かけたのを思いだしたんだ。「ネズミは――ネズミの――ネズミへ――ネズミを――ネズミよ!」)ネズミは、いささかさぐるような目つきでアリスをながめて、小さな目のかたほうでウィンクしたようでしたが、なにもいいません。

 


< back = next >
 < 目次 >