No.110

 「これまできいたなかで、もっとも重要なしょうこぶっけんじゃ」と王さまは、手もみしながらもうします。「では陪審は判決を――」

 「あのなかのだれでも、いまの詩を説明できるもんなら、六ペンスあげるわよ」(アリスはこの数分ですごく大きくなったので、王さまの話をさえぎっても、ちっともこわくなかったんだ)「あたしはあんな詩、これっぽっちも意味はないと思うわ」

 陪審(ばいしん)はみんな、石板に書きつけました。「この女性はあんな詩、これっぽっちも意味はないと思う」でもだれもそれを説明しようとはしません。

 「これっぽっちも意味がないなら、いろいろてまがはぶけてこうつごうじゃ、意味をさがすまでもないんじゃからの。しかしどうかな」と王さまは、詩をひざのうえにひろげ、かた目でながめてつづけます。「どうもなにかしら意味はよみとれるように思うんじゃがの。『――泳げないといった――』おまえ、泳げないじゃろ?」と王さまはジャックのほうをむきます。

 ジャックはかなしそうに首をふりました。「泳げそうに見えます?」(たしかに見えなかったね、ぜんしんがボールがみでできていたもの)。

 「いまのところはよいようじゃな」と王さまは、詩をぶつぶつつぶやきながら、先をつづけます。「『これが事実なのはわかってる』――これはもちろん陪審じゃな――『ぼくは彼女に一つやり、みんなはかれに二つやり』――なんと、これはこやつがタルトでしでかしたことではないか――」


< back = next >
 < 目次 >