No.108

 「なにが書いてあるのじゃ?」と女王さま。

 「まだあけておりませんで」と白うさぎ。「でもなにやら手紙のようで。囚人が書いたもののようです――だれかにあてて」

 「そうだったにちがいない。ただし、だれにもあてていないかもしれないぞ、めったにないことではあるがな」と王さま。

 「だれあて?」と陪審の一人。

 「あて先がまったくないのです。じつは、外側にはなにも書かれていないのです」こういいながら、白うさぎはかみをひらいて、つけたしました。「やっぱり手紙ではありませんでした。詩です」

 「囚人の筆跡かい?」とべつの陪審がききます。

 「それがちがうのです。一番なぞめいた部分ですな」と白うさぎ。(陪審たちはみんな、ふしんそうな顔をします。)

 「だれか別人の筆跡をまねたにちがいない」と王さま(陪審たちはみんな、顔がパッとあかるくなりました)。

 「おねがいです、陛下。わたしは書いておりませんし、だれもわたしが書いたとは証明できないはずです。最後にしょめいもないじゃないですか」とジャック。

 「しょめいしなかったのなら、なおわるい。きさまはまちがいなくなにかをたくらんでおったろう。さもなければ、正直者としてちゃんとしょめいをしたであろうからな!」と王さま。

 これにはあちこちではくしゅがおこりました。この日、王さまが言ったはじめての、まともにかしこいことだったからです。

 「これであやつのゆうざいが証明された」と女王さま。

 「ぜんぜんそんな証明にはならないわ!」とアリス。「だいたいみんな、なにが書いてあるかもまだ知らないくせに!」

 「読むがよい」と王さま。

 白うさぎはめがねをかけます。「どこからはじめましょうか、陛下?」

 王さまはおもおもしくもうします。「はじめからはじめるがよい。そして最後にくるまでつづけるのじゃ。そうしたらとまれ」

 白うさぎが読みあげた詩は、こんなものでした:


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