No.5
アラジンはこわがって、家へ走って帰ろうとしました。けれども、まほう使はそうはさせませんでした。アラジンのえりがみをつかんで、引きもどしました。
「伯父さん、どうしてこんなひどいことをするんです。」アラジンは泣きじゃくりながら見上げました。
「だまって、私の言う通りにすればいい。この石の下には 宝物 ( たからもの ) があるのだ。それをお前に分けてやろうというのだ。だから私の言う通りにおし。すぐに出て来るからな。」
と、まほう使が言いました。
宝物と聞くと、アラジンは今までのこわさはすっかり忘れて、よろこんでしまいました。そして、まほう使の言う通りに、石の上の輪に手をかけると、石はぞうさなく持ち上りました。
「アラジンや、ごらん。そこに下へおりて行く石段が見えるだろう。お前が、その石段をおりきるとね、 大広間 ( おおひろま ) が三つならんでいるんだよ。その大広間を通って行くのだが、その時、 外套 ( がいとう ) がかべにさわらないように気をつけなきゃあいけないよ。もしさわったが最後、お前はすぐに死んでしまうからね。そうして、その大広間を通りぬけると、 果物畠 ( くだものばたけ ) があるのだよ。その中をまた通りすぎると、つきあたりに穴ぐらがある。その中に一つのランプがとぼっているからね、そのランプをおろして、中の油を 捨 ( す ) てて持ってお帰り。」
まほう使はこう言いながら、おまもりだといって、まほうの 指輪 ( ゆびわ ) をアラジンの指にはめてくれました。そして、すぐに出かけるようにと 命令 ( めいれい ) しました。
アラジンは、まほう使の言った通りにおりて行きました。何もかも、まほう使が言った通りのものがありました。アラジンは三つの大広間と果物畠を通りぬけて、ランプのあるところまで来ました。そこで、ランプをとって油を捨てて、だいじにふところにしまってから、あたりを見まわしました。
< back 目次 next >